アメリカVS中国 AI覇権の行方

AIが戦争をどのように変えつつあるのか、私たちは文字どおり目の当たりにしている。軍事だけではない。社会と経済の大半の分野で、AIが最大の競争優位性を手にする日は近い。

アメリカはAI誕生の地であり、この分野の重要な革新や大多数の研究機関を擁する。ただし、世界のライバルもすぐ後ろに迫っている。

中国は数十億ドルを投じて、30年までにAI分野で世界をリードするという目標を掲げている。ロシアが開発している次世代型戦闘機ミグ41はAIを搭載した超音速迎撃機で、最高時速は7200キロを超える見込みだ。

冷戦時代の宇宙開発競争に、アメリカは国家として熱意を注ぎ込んだ。現在のAI開発競争にも劣らぬ情熱で取り組まなければ、失うものは国のプライドどころではない。

アメリカがどの分野で遅れているかは、コンピューターで計算するまでもない。国の重要課題にAIは含まれず、科学技術関連の予算は削減され、移民の制限はあらゆる分野の競争力を損なっている。手遅れになる前に軌道修正するべきことを、4つの観点から考えてみたい。

■米国内の研究者の革新性を後押ししてきた開放的な環境は、一方で彼らの発見が確実に保護される前に公表されてしまうジレンマをもたらしている。米企業の特許申請のプロセスを迅速化するとともに、知的所有権を侵害する外国企業に対抗できるよう、政府が支援することも必要だ。

■AI技術の流出を阻止するための規制は、自らの競争力の低下と背中合わせでもある。例えば、アメリカは暗号化技術と基本的なプロセッサの輸出を規制している。サウジアラビアやパキスタン、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコなどの同盟国が、対テロ戦争においてアメリカ製の無人飛行システムへのアクセスを求めているが、申請に時間がかかったり、却下されることも多い。その結果、市場のほぼ全てを中国の輸出業者や現地の開発業者に奪われている。

■ディープラーニング(機械学習の一種)の研究論文の数は中国が世界で最も多く、スーパーコンピューターでもアメリカは遅れている。現政権の予算案はAI関連を削減しているが、もっと多くの公共投資が必要だ。

■中国は優秀なAI研究者を集め、米IT企業の買収にも力を入れている。その対抗策として、アメリカがやるべきことは大きく3つ。専門家や技術者の永住権取得を、制限するのではなく緩和すること。公立大学のAI研究機関への連邦補助金を、減らすのではなく増やすこと。奨学金などの教育プログラムを減らすのではなく増やして、博士号取得予備軍を集めることだ。AIに特化したスタートアップを税制面で支援することも効果的だ。

AI脅威論を繰り返す起業家のイーロン・マスクは、AIが「悪魔を呼び起こす」、開発競争が「第3次世界大戦の引き金になる」と恐怖をあおる。しかし、科学技術の研究を国の目標として追求しなければ、国防や産業など主要分野の主導権を他国に譲り渡しかねない。それこそが真の脅威だ。

AIは人類にとって次の大きな飛躍である。月面に初めて人類を立たせた国として、アメリカは適切な一歩を踏み出さなければならない。